本研究では、英語の無生物主語の他動構文と自動構文が、韓国語と日本語翻訳書でどのように訳されているのかを、実例分析に基づいて考察した。研究の結果を簡単にまとめると、次のようになる。
第一、予想とは違って、他動構文の翻訳においても自動構文の翻訳においても、原文の構造が翻訳文でもそのまま維持れる類型がもっとも高い頻度で現れた。具体的には、自動構文の構造が翻訳書で維持される例は、韓国語翻訳文では約54.9%、日本語翻訳文では約44%現れており、他動構文の構造が維持される例は、韓国語翻訳文で約37.9%、日本語翻訳文で約26.4%現れた。構文別には自動構文で、言語別には韓国語翻訳文で、原文の構造が維持される傾向が強いということになる。
第二、韓国語翻訳文と日本語翻訳文では主語が直接は現れていない文も少なからず観察された。すなわち、英語の無生物主語の構文を翻訳する際、必ずしも主語をたてる必要はないということである。主語の翻訳様相をみると、無生物主語の維持>主語の非明示>人主語への転換の順に現れ、先行研究での指摘のように無生物主語が人主語に転換される類型は代表的な類型であるとは言いにくいことがわかった。
第三、無生物主語の他動構文と自動構文は必ずしも動詞文で翻訳されるのではなく、名詞․形容詞文で翻訳されることもしばしばある。名詞․形容詞文で翻訳される例をみると、名詞や形容詞を補語として取る英語のbe動詞や感覚を表す動詞などが関係しており、その他に、原文が否定語を伴う場合も、翻訳文では形容詞文で現れることがある。
最後に、英語の「時間名詞+移動動詞」構文は、韓国語と日本語翻訳文では移動動詞は翻訳されず時間名詞だけ翻訳される傾向があった。このことから、英語に比べ韓国語と日本語は時間名詞が移動動詞の主語になることに制約があることがわかった。