本稿では、19世紀末の日本最初の国語辞典(『言海』)に収録されている漢語を対象にし、それらの漢語における韓国語との同形同義語の割合及び中国製漢語や日本製漢語の割合などについて分析と考察を行った。
分析の結果、韓国語との同形の割合は95%、同形の中の同義の割合は94.2%で、その数値がかなり高いことが分かった。また、中国製漢語や日本製漢語の場合はそれぞれ62.1%と17.4%であった。さらに、中国製漢語と思われる語と日本製漢語と思われる語は両方共に9.3%であった。日本の国語辞典であるにもかかわらず中国製漢語の割合が高く現れたことは特徴的と言えよう。韓国の『朝鮮王朝実録』を対象にして確認した結果、中国製漢語の場合は、日本語との言語接触があった以前からすでに韓国で使われていたことが分かった。これは、調査の対象語彙が日本の国語辞典であるにもかかわらず、韓国語と同形同義語が多かった理由の一つであると判断される。一方、韓国の場合は、歴史的な背景の理由などから、日本から日本製漢語を多く受け入れていることも同形同義語が多くなった理由の一つであると考えられる。このような傾向は、今回の調査分析を通じても確認することができた。
今回の調査は『言海』に対する予備調査ではあったが、19世紀末の日本の国語辞典に載っている漢語における特徴として、韓国語との同形同義語の割合がかなり高いという点、中国製漢語の割合が高い点などのことを明らかにすることができたと判断する。『言海』に対する今後の全体的な調査分析の機会では、中国や韓国及び日本などの調査対象文献をさらに追加、補強して分析することで、中国製漢語と日本製漢語の候補に当る語に対し、より明確な判定が下せるように努めていきたい。