本論文は、絵双六における文学の活用を昔話、忠臣蔵物、キャラクターとしての化物を中心に探ってみたものである。江戸メディアの中で、絵双六はそのゲーム性を帯びている形式から現代的メディアとしての可能性を搭載したといえる。内容にとっても現代に適用できる要素が数多く発見されている。第一に、ゲーム化を実現させるのに要求されるストーリー性を持っている昔話。第二に、歴史的事件をフィクション化して再誕生させた忠臣蔵物とその登場人物、そしてそこから派生した俳優と連携したもう一つのキャラクターたち。第三に、江戸․明治期と今日でも依然として豊かなキャラクター性で多くのメディアで活用されている化物たちが文化コンテンツとしてより高い可能性を持っていることを絵すごろくを通じて把握することができた。絵双六は昔のただの玩具絵だけでなく、本稿で触れた文学性を含め、色々な角度から日本の文化現象を過去と現在、そして未来まで語られる日本近世ならではの視覚メディアとしてこれからも分析していきたいと思う。