世界初、変身ロボットが登場するSF映画「トランスフォーマー」は、日本の変身ロボット玩具が母体になったものである。この映画以前には西欧においてロボットを英雄として描いたものは余り見当たらない。ところが「トランスフォーマー」が登場する20年前、手塚治虫は世界初に変身するロボットを誕生させた。変身ロボットは事物を擬人化する日本のからくり人形の伝統を受けづいだもので、からくり人形の変身は生命を象徴するものであった。手塚は自分の漫画の核心テーマが「変身」であると語るように彼の漫画には変身する生命体と変身ロボットが多く登場する。ところが、彼の漫画における変身は改造された生命体、生まれ変わった人間の輪廻、さらに変身を強要されたロボットの不幸など、人間の欲望の象徴でもある。手塚は変身する存在を通して人間の欲望と物質の豊かさ、科学技術の発達が人類を滅ぼす危険性があることを警告しているのである。