本論文は、日本の価値志向的な外交の重要性とその特徴を分析することを目的とする。日本はなぜ価値的な外交を唱えているのか。日本での価値外交というのは普遍的な価値を自由、民主主義、人権、法の支配、市場経済と定義する。日本の価値志向的な外交とは「自由と繁栄の弧」から「自由で開かれたインド太平洋」へと変化してきた。この論文はスティーヴン・クラズナーの「組織化された偽善」(Organized Hypocrisy)とジョセフ․ナイのモラルに対する論議を土台に日本の価値外交を意図/動機、手段、結果の側面で分析する。日本の価値志向的なアプローチとモラルは、国際社会で認められるための闘争によって理解することができる。敗戦国または加害国に過ぎなかった日本は戦後レジームから脱却し、国連安全保障理事会の常任理事国をはじめとする国際社会の主導国になるため孤軍奮闘してきた。このため、日本は普遍的価値の強調、国際公共財の提供、価値ネットワークの拡張など、価値外交を通じた正当性の確保に努めている。その分析結果に基づいて、日本の国際社会への承認闘争という意図と動機、手段での価値ネットワーク、そして外交的偽善に帰結する価値外交の特徴を確認できる。