本稿では、ビジネス場面に限定して日․韓両言語の要求表現がどのように使われているのかを各言語ごとに使用実態を分析し、一つの要求表現形態が「命令」、「依頼」、 「勧誘」など特定の意味だけを限定的に持たず多様な意味で使用されることを明らかにした。
日本語は相手を配慮した間接的表現を好むと言われているが、ビジネス場面では 「間接型」要求表現より「直接型」要求表現の使用が多かった。これは場面の特性上、配慮より明確な意思伝達がより重要に思ったことと考えられる。しかし、「依頼」の時は、「間接型」を使用して聞き手を配慮する場合が多い。また、話し手が目上の人の場合「直接型」の使用が多いのは、ビジネス場面の特性上、権限を持つ目上の人は相手に要求する際に負担を感じず、配慮をあまり気にしないことと考えられる。韓国語の要求表現も日本語と似た特徴を見せるが、韓国語側の「直接型」要求表現の使用比率は日本語に比べて相対的に高いことが分かった。なお、「間接型」の使用においても差が見られる。
日本語は明示的な配慮、表現の使用が多いが、韓国語は明示的でない配慮表現の使用が多い。このような違いはビジネスで使用する要求表現に関する両言語の用法が異なり、配慮戦略に差があるためだと言える。