『千載和歌集』は抒情性を重んじた勅撰和歌集であり、「夢」の歌は三十八首が収められている。『拾遺和歌集』から『詞花和歌集』まで歌語「夢」は変奏の沈滞と使用の減少の様相を呈していたが、『千載和歌集』では「夢」の歌が激増し、変奏されるようになる。本稿は『千載和歌集』の「夢」の変奏に注目したものである。『古今和歌集』では夢への頼りと「夢」の儚さを中心に詠まれていたが、『千載和歌集』までその命脈が繋がれる。尚、『千載和歌集』では夢の現実との繋がりという様相が見られる。本稿は歌語「夢」の転換期の歌集である『千載和歌集』の「夢」の歌を概観し、「夢」の変奏について考察したものである。