序章 江戸のエピステーメー二つのエピステーメー/古代のテキストを訓(よ)む/言語を分解する/「感情情報」への接近――メタ言語と和歌/双六から探る皇朝学/動的な江戸時代の学際/宣長宇宙第一章 フィロロジスト契沖一 契沖の『萬葉集』研究――万葉仮名を整理する「正語仮字篇」というテキスト/現在の方法と契沖の方法/いろいろな「よめない」/契沖のアプローチ――漢籍の精読、サンスクリット(悉曇)研究/区別があるから通じる二 『和字正濫鈔』は仮名遣い書か『万葉代匠記』から『和字正濫鈔』へ/『和字正濫鈔』――漢字で文字化された日本語にたどりつく/思考を図であらわす三 橘成員との論争『和字正濫鈔』への批判――『倭字古今通例全書』/契沖の論駁――『和字正濫通妨抄』『和字正濫要略』/まことと和歌四 語源・異名への意識――『円珠庵雑記』をよむ語源について/異名について第二章 賀茂真淵――経験、直感による知覚一 『冠辞考』あまとぶや/ぬえぐさの二 直感によるアプローチと論理いにしへのこころ/真淵と宣長三 歌を詠むこと・歌を理解すること――実践的解釈論ひたぶる心/心におもふ事がうたになる/感情の表出四 五十音図による音義的解釈のさきがけ「仮字(かな)」と五十音/音義的な語構成観/知のネットワーク/延約転略の説/今夜の月夜/おわりに第三章 本居宣長一 文法のダイヤグラム――『てにをは紐鏡』「係り結び」の意識化――中世から江戸への伝授/『てにをは紐鏡』を観察する二 仮名によって漢字の発音を示す――『字音仮字用格』「假名都加比」と『字音仮字用格』/漢語を仮名で書く・漢字音を仮名であらわす三 メタ言語としての口語メタ言語――言語を言語で説明する/メタ言語の獲得/「古言」「里言」というメタ言語――富士谷御杖『詞葉新雅』/文献密着主義/文献における具体と抽象/日本列島外の日本語――岡島冠山『唐話纂用』/日本列島内のさまざまな日本語――越谷吾山『物類称呼』四 宣長の方法――『古今集遠鏡』『古今集遠鏡』を概観する/人文知のとらえかた/真淵との「始対面」/余白に書く/宣長のよみ/人情、感情の言語化/古文辞学の方法――荻生徂徠から真淵、宣長へ五 上田秋成との論争――「呵刈葭』「呵刈葭」を概観する/「呵刈葭」上巻の論争/民族主義的であることと論理的であること/音声言語の位置づけ/おわりに第四章 富士谷御杖の言霊倒語説一 異端の国学者御杖の生きた時代/未分化なテキスト/二十世紀の御杖の評価二 歌を詠むことで「真言(まこと)」を追究する人の心のありかた/人にとって歌とは何か――歌論『真言弁』/歌の「稽古修業」――『歌道非唯抄』/古典を照らす「燈」三 さまざまな言語学的知見六運/脚結(あゆい)に着目する――『あゆひ抄』と『俳諧天爾波抄』/『和歌いれひも』/メタ言語としての口語――『詞葉新雅』/伝達言語と詩的言語四 言霊倒語説おわりに終章 詩的言語と国学者国学者が和歌を作るということ/本居宣長『新古今集美濃の家づと』/国学者たちの「連続」の「感覚」/人情にちかいこと/人情と思想のかかわり註あとがき