本稿は、古代日本社会で「老人」と分類される年齢と、個人が自らの「老い」を認識する時点間の差異と関連性について分析したものである。日本の上代文学の中で登場人物が自分の「老い」を言及する述語的表現がどのような文脈の中で使われているのかを分析し、これを通じて、個人が「老い」を受容して認識する時点を調べた。さらに、古代の法令である養老令の中に規定された老人の年齢基準とともに、官職辞職に関する年齢規定も調べた。これにより、社会制度的に定義された老人と、個人が自らの「老い」を認識する自我認識との関連性について論じた。このような分析を通して、特定の年齢に達すると社会的責務に対する「剥奪」を経験しなければならない現代の社会制度に示唆を示し、生涯周期の中で老年期に対する再考に寄与できると期待される。