マキノの全作品を画一的に結論付けることはできないが、マキノ語の結合方式による差を示す。初期には英語を特徴的に使用するタイトルを使っていたが、次第に英語とマキノ語を同一の占有方式で結合させはじめ、次に英語はカタカナの中に隠れて消える様相を呈している。筆者が最も注目した点はマキノの英語使用、英語の上にカタカナを重ねたテキストにおける英語と日本語の意味と表現による隔たりの発生、対話体での漢字とカタカナの過剰使用であった。それは牧野が自覚していなかったとしても、筆者は当時の時代的状況と彼の作家精神から発現した文学的方法の不一致からくる亀裂が新しい方式によって日本近代文学に牧野ならではの新たな言語的特徴が現れたと主張する。