本稿では、〈文豪とアルケミスト〉が日本近代文学の活性化に貢献したという観点から、誕生背景を含む人気要因を検討し、共有と拡散の様相について考察した。 東浩紀のデータベース消費論に基づき、人気要因を分析した結果、〈文豪とアルケミスト〉は、好きなキャラクターの「萌え要素」を探そうとする若者の微視的欲求に合致するゲームであったことがわかった。そして、近代文学作品の復刊とアーカイブが活性化し、SNS上での読書が活発化したことで、近代文学は共有と拡散が行われたのである。 〈文豪とアルケミスト〉は、若者が多く接するゲームという媒体を通じて、近代作家と作品に対する若者の関心を促すのに非常に効果的に作用した。ゲームの制作意図は、「侵蝕者」によって消えた近代作品を蘇生させ、忘れ去られていく人々の「個性と意志」を復活させようとしたものであり、これがゲームの外の現実世界にも適用されたといえる。